経営シミュレーション研修による人材養成プログラム・・・ビジネス用語の解説
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平易な切り口と経営視点から書いた会計本です。よろしければどうぞ

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2007/2/12 加筆
2008/9/1 count


「サヨナラ」だけが人生か。有名な漢詩を「戯訳」して四季の情景や人生の哀歓を詠んだ本です


OEMとは、ODMとは

Original Equipment Manufacturing

OEM(オーイーエム)とは相手先ブランドによる製造のこと。通常、販売力はあるが生産能力がない(または不足する)会社と生産力はあるが販売力が弱い会社間で相互補完的に行われる取引である。製造(ベンダー)側は委託先の仕様に従って製造し納品する。

商社とメーカーの間、メーカー同士などで交わされる。白物家電(冷蔵庫・洗濯機等)では古くから行われていた。パソコンも典型。デル、HP、IBMはもとより国内ではNEC、富士通などのほとんどの企業は何らかのOEM調達をしている。その製造元は台湾企業が多い。例えば台湾の広達電脳はノートパソコンの生産シェアは25%であり、その2003年の生産台数は1000万台(日本の国内総販売数に近い)。販売と生産の水平分業の典型だ。軽自動車の分野でも盛んだ。大手と言えどもそう簡単に軽自動車の生産ラインを作るわけには行かないので、スズキやダイハツのように専業メーカーは各社にOEM供給している。

なお、OEMをさらに進化させて、設計から製造まで手がけることをODM(Original Design Manufacturing 相手先ブランドによる設計・製造)という。
単なる相互補完ではない場合もある。特定の技術規格で市場が決まるような場合は、「よい競争業者」作りにより生産の標準化を目指すことがある。つまり「デファクトスタンダード(事実上の標準規格)」を確立するためにOEMが戦略的に利用されるのだ。VTR、ビデオカメラ、次世代DVD、ハイブリッドエンジンなどはその例。


近年、製品種類の絞込みや製品・市場の集中戦略をとる企業が増えている。その結果、自社でフルライン戦略をとれずに、カタログのあちこちにOEMやODM調達品を入れる企業がある(時間を買うOEMと呼ばれる)。ファブレス企業の流行りもそうだ。その結果、委託先メーカーはホクホクだ。
そこには従来の下請けと言うイメージはない。発注先企業を増やして数量を確保すれば、規模の経済が働く。稼働率が100%確保できれば言うことない。生産技術力の蓄積も寄与する。わざわざリスクと高いカネをかけて自社ブランドの流通と販売を開拓する必要はない。上手くいった先にあるのは、発注元よりも確実に高い利益率が取れるビジネスなのだ。

ここで成功した企業には船井電機がある。国内的には認知度は低く、ブランドイメージは低いが、並み居る高ブランド企業を尻目に、同社(2004/3)の経常利益率は10%、株主資本比率は68%、ROE19%は優良企業そのものだ。企業を見かけだけ評価してはいけないと言う典型例だろう・・・同社のHPの財務情報でどんなOEMをやっているか見てみると良い。

似たような企業にレンズのタムロンがある。私が昔、一眼レフに凝っていた頃、一流はニコンやキャノンだった。でもやけに高い。交換レンズ1本が初任給並みなんてのもあった。だから値段を気にする購買層に対してタムロン等のレンズ専業メーカーが安いのを売っていた。なんとなくさえないイメージの会社と思っていたのだが、どうして、今はデジカメのレンズで業績も良いらしい。

しかし、この道も楽ではない。安易なOEM下請けメーカーに安住していると、数量(仕事)が集まるときは良いが、下流の販売に陰りが見えるときは、マーケット(顧客ニーズ)情報が自社で集められないから、リスクも多い。じっと黒子に徹するか否かが問われる。思うに、一秒・一銭単位をおろそかにせず、地味で泥臭い努力が企業文化になっていないと徹しきれないだろう。
と思って両社のP/Lを見てみたら・・・と言うかHPを見たら・・・

船井電機/連結 2000/6 2001/3 2002/3 2003/3 2004/3
売上高総利益率(%) 24.0 20.2 19.7 22.3 22.2
営業利益率(%) 10.9 8.4 8.4 10.6 10.7
経常利益率(%) 10.9 10.5 9.6 10.2 10.1
タムロン/連結 2003/12 2004/12
売上高総利益率(%) 24.2 24.6
販管費比率 12.7 13.2
売上高営業利益率(%) 11.5 11.4
売上高経常利益率(%) 10.0 10.4

本業の収益力を示す営業利益率は10%の二ケタ台。金利負担が無いためか経常利益率もうらやましい二桁。まさに高収益企業だ。完成品を売るメーカーから見たらやんなっちゃう?。でも、決して高くない粗利率 (売上高総利益率)に注目。中小企業の製造業並みかそれ以下だ。秘密は販管費比率の低さだ(粗利率−営業利益率で求められる)。OEM注力だから販売費、研究開発費が少なくて済む特徴がよくでている。両社には華美に流れたり高給取りのホワイトカラーがたくさん居るというイメージは無いようだ。・・・と勝手な推測をした

 概ね差別化する必要のない商品、つまり成熟商品を主戦場にする。ひたすら低コストで作っても低価格で売るため単位当たり粗利は低いが、量産が可能となりシェアを高めて規模の経済を追求する戦略だ。成熟市場(商品)を上手に渡り歩くことができるとすれば、名だたる企業よりも優れた企業といえないだろうか・・・

 世の中にはもっとすごい会社があるものだ。バイ・デザインという会社をご存知だろうか。低価格の薄型テレビで有名だけれども、知っていれば情報通。OEMではなくファブレス企業なのだが、「販管費比率が5%以下」と社長が言っていた(2005/11)。このような会社には交際費という言葉は存在しないかもしれない。


個人的な経験談・・・プロジェクトX風に

70年代、メーカーでPOS機器の開発をしていたが、発注元は大手商社だった。適当に注文が入っていた。言われるままの仕様で開発すれば良かった。こんなうまい商売はない。しかし長続きはしなかった。注文が途絶えだした。なぜ売れないのか分からない。客が見えないというのが上司のジレンマだった。OEMの悲哀を味わった。やがて商社との契約は解消し、自社ブランドの販売に乗り出した。みんな燃えた。やりがいがあった。・・・しかし今はやってないだろう


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