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2010.12.5〜

キャッシュフロー計算書とは


 なぜ、売掛金や在庫、買掛金の増加減少を足したり引いたりするのか?


  1. キャッシュフロー計算書とは
  2. なぜ減価償却費を足し、なぜ売上債権や棚卸資産、仕入債務の増減を調整するのか?
  3. 数式で間接法キャッシュフローの構造を説明する
  4. 資金繰りとキャッシュフローの違い

Topic: エルピーダメモリの倒産とキャッシュフロー …2012.2/29


1.キャッシュフロー計算書とは Cash flow

 P/LとB/Sが分からない人にまた一つ分からないものを追加して会計嫌いを助長した計算書かもしれない。2000年から連結キャッシュフロー計算書の作成が義務つけられた。キャッシュフローは資金の流れとか現金収支と訳されるが、現金とか資金の概念用語だから適訳がないためか英語のままの表現になったようだ。意味がよく分からなくても『キャッシュフロー』と言えば、カッコイイ。

 キャッシュフロー計算書は、資金の生成(増減)過程を営業活動投資活動財務活動の三区分で表示して、どれだけ手取りとなる現金を増やしたか、あるいは減らしたかを明らかにしている。
 一番肝心の営業活動キャッシュフローの部には現金の入出金とは直接的に関係なさそうな項目も結構並んでいるが、P/Lの営業利益までの段階に相当するキャッシュフローは「小計」欄までだ。
小計の下は財務活動や投資活動には含めにくい項目を集めたものである。P/Lの営業外損益や特別損益の内容に近い。利息の受け取りや支払、保険金の受け取り、賠償金の支払、リストラ関連の支払、法人税の支払など。 つまりは小計までが純粋な営業活動のキャッシュフローという見方をする。

 そもそもP/Lで表現される抽象化された損益計算のもつ限界を理解できないと、なぜキャッシュフロー計算書が必要なのか理解できないはずだ。P/Lとは一定期間の「収益−費用」であるが、収益(その典型は売上)と言っても実は代金が回収されているか否かは関係ない、費用と言っても現金で支払ったかどうかは関係ないのだ。つまり、「損益」とは現金の動きとは無関係に計算するから、その結果である利益は抽象的(仮のモノ)というわけだ。
 現金という具体的なゼニに対し、損益とは抽象化されたものなのだ。ここに『損益と収支の違い』の本質がある。
 損益とは「売上−費用」である。広い意味では売上とは表現しないで収益である。
 収支とは「収入−支出」である。

 紋切り型のように使われる『勘定あって銭足らず』がよい例だ。「勘定あって」とは利益が出ていること、つまり儲かっている状態だ。しかしなぜか手元には「銭足らず(現金がない)」という事態がおきる。
 売上があっても直ぐに入金されるわけではない、仕入れても直ぐに現金で払うわけではない、いろいろなタイムラグ(時間のズレ)を伴う取引を収益と費用で集約するのがP/Lであり、入金や出金という現金の増減については見ていない。そこをキャッシュフロー計算書で説明するわけだ。

 キャッシュフロー重視の経営をすると資金効率や財務体質が改善する。 当初の導入時はいろいろと喧伝され、キャッシュフロー重視の経営が声高に騒がれたが、景気回復と共にあまり聞かなくなった。定着しつつあると言うのも背景だが、時代のはやりもあるのだろう。しかし不況になると、また脚光を浴びる。現金を厚く持つことが、企業存続に不可欠だからだ。


 2.なぜ減価償却費をたし、なぜ売上債権や棚卸資産、仕入債務を加減するのか?

 間接法のキャッシュフロー計算書は、当期の損益計算書と二期間の貸借対照表がベースになって作られる。しかし会計以外の人にとって、間接法は分かりにくいものだ。経営の改善や外部分析の意味では総額表示をする直接法のが分かりやすい。なぜ利益に減価償却費を足したり、売上債権(売掛金や受取手形)、棚卸資産(ようするに在庫)、仕入債務(買掛金や支払手形)を足したり引いたりするのだろうか。まるでゴチャゴチャの計算書と思われても仕方ないかもしれない・・・

しかも、売上債権の増加分が引かれたり、売上債権の減少分が足されたり、あるいは「売上債権の増減」という表現をされる場合もあって、分けがわからない・・・という感じになりがちだ。「売上債権の(増加)減少」という表現もある。

なぜ、売上債権の増減が利益に対してプラスかマイナスとして調整されるだろうか?。 売上債権の期首から期末への変化は、次式のようになるから・・・

 期首の売上債権
+ 売上高
− 現金回収高

  期末の売上債権

期首の売上債権+売上高−当期の現金回収高=期末の売上債権
つまり、現金回収高=売上高−売上債権の差額となる。売上高から売上債権の差額を引いていることになる。これでキャッシュフロー計算書の中で、利益から売上債権の差額が引かれているのがイメージとして理解できると思う。

例えば、期首売上債権が50、期末が70なら、利益−20となる。期末が40へ減っている場合は、利益−(−10) → 利益+10 となって加算になるわけだ。売上債権の増加はキャッシュフローを減らし、減少はキャッシュフローを増やすほうに作用する。同様に、棚卸資産や仕入債務もこのようにやると良い。


 3.数式で間接法キャッシュフローの構造を説明する

でも、次の説明の方が会計的であり理論的にもスッキリするだろう。初めて見たとき、この説明が一番スッキリしていると感心した。まさに目から鱗。以下は石川先生の書籍からの引用。詳しくは先生のホームページを参照願います。

石川純治 教授(駒澤大学経済学部教授、インターネット講座 「複式簿記のサイエンス−簿記とは何かを求めて−」(2010/11月)。
C=キャッシュ、NC=非キャッシュ資産、L=負債、K=資本、Π=留保利益、非キャッシュ資産には売上債権や棚卸資産の他に固定資産などキャッシュ以外が含まれる。

キャッシュフローの構造説明

@  C+NC=L+K+Π、   C+NC=L+K+Π
A ΔC+ ΔNC= ΔL+ΔK+ΔΠ
B ΔC= ΔΠΔNCΔL+ΔK
2期間の貸借対照表において、各々貸借対照表の等式として、@式が成り立つ。したがって、その差額であるAが成立する。差額であるΔCとは、C'-Cのことである(キャッシュの変化分)。A式からB式が誘導される。
ΔΠとは留保利益の変化分だから当期利益のことである(P/Lの最終利益が純資産へ蓄積される)。結局次のようになる。
C キャッシュの増減=当期利益−非キャッシュ資産の増減+負債の増減+資本の増減

また、「資本の増減」はめったにあるわけではないので、通常は0である。このC式から、間接法のキャッシュフロー計算書の姿が説明されているわけだ。P/Lの当期利益から非キャッシュ(売上債権や棚卸資産)の増減分を引く理由が良くわかる。


さらに、減価償却費を足しこむ理由は次の通りになる(「減価償却」の意味が理解できていれば説明不要なのだが・・・)。

固定資産の変化=当期−前期
S’-(DR+D) − (S−DR)
=S’-S D
ΔSD
つまり、固定資産の増減とは取得価額の増減−減価償却費である。C式へ入れると、
キャッシュの増減=当期利益+減価償却費−非キャッシュ資産の増減+負債の増減


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