税効果会計とは
特段、節税に役立つものではないのだが、どんな効果があるのだろう・・・
下は、税率40%、限度を超えた引当金50を計上したときの税引前利益が100 と言う例。
税金の計算では過大な費用分を認めないから、(100+50)×税率40%で60となる。その結果、当期利益は100-60で40となる。これに税効果会計を適用した場合は、当期利益は60へ増えるから資本の蓄積に役立つ。ただし納税はあくまでも60。
従来の計算 |
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税効果の計算 |
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引当金 |
50 |
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引当金 |
50 |
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税引前利益 |
100 |
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税引前利益 |
100 |
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法人税等 |
60 |
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法人税等
法人税等調整額 |
60
△20 |
この調整額は将来還付されるだろうとしてB/Sに繰延税金資産として計上する |
当期利益 |
40 |
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(税金費用) |
40 |
税引前に対する税率は40%になる |
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当期利益 |
60 |
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従来は実際に支払う税金をそのままP/Lに計上していた。しかしそれでは、退職給与引当金を早めに費用化したり、不良債権を早めに償却(費用化)しようすると、税引後の「当期利益」が減ってしまう。つまり見た目の決算が悪化するから、早めの償却が進まないというジレンマだ。
これに税効果会計を適用すると、収める税金は変わらないが、P/Lに計上する税金の値を有税分だけ少なく計上できる。その理由は、有税分は税金の前払分であり、あくまでも当期間の利益に対する税金のみを計上させようとする考えだ(利益と税金を期間対応させる)。
このような税金の影響による利益のズレを調整するのが税効果会計である。つまり、払いすぎた税金を将来戻ることを前提にして資産化するわけだ。
従来だと多額の引き当てで会計上の当期利益が大赤字になり株主資本が減って困るが、税効果会計により減益幅を小さくできるから、株主資本を減らさなくてすむ。思い切った不良債権処理がしやすくなると言うわけで、99年から銀行決算に認められた。
ところが、いくら税効果会計で将来の税金還付を見込んだとしても(つまり繰延税金資産が積み上がる)、翌年もその翌年も赤字続きならいつまでも還付されないことになる。また税法では過去5年間までの赤字(損失)は黒字から差し引けるわけだが、早めに黒字化できないと効果がない。
将来に黒字になる(税務では課税所得が黒字)ことが前提の資産だから、言ってみればあまり実態の無いようなものでもある。本当に将来立ち直る企業が導入するなら良いのだが、危うい企業がこれを使うと、一時的に資本増強になっても、甘い収益見通しによる見せかけは問題先送りになる。この問題点は当初から指摘されており最近は適用の厳格化も議論されている。そんな折、2005/1月には足利銀行で問題になった。過大な計上をし、配当などできないはずなのに配当をしたと言うものだ。
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