経営シミュレーション研修による人材養成プログラム・・・ビジネス用語の解説
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05.10/16 配当回数を追加
07.9/7 DOEの純資産について追加変更
07.12/14 DOEの変更
08.12/23 ステークホルダーの図追加
08.12/24 カウンター設置

安定配当から配当性向へ(業績連動型の配当)、配当利回り、純資産(株主資本)配当率(DOE)とは


  1. 配当性向とは
  2. 配当利回りとは
  3. 大株主の注文
  4. 四半期配当とは
  5. 純資産/株主資本配当率 DOE

安定配当とは、伝統的と言われるくらい長い間日本企業で採用されてきた配当政策のことである。これは株式の額面に対して一定割合で配当することだ。例えば50円額面なら1株につき中間で5円、本決算で5円という例が多い。毎年、業績が良くても悪くても(赤字でも)同じ額だけ配当するから『安定配当』と呼ばれた。

その根底には『業績が悪くても払うのだから、一時の配当金が少なくてもよかろう・・・』というような支払側の論理もある。この慣習がいつ頃から始まったのかは知らないが、日本的な経営者と株主の関係を象徴していると思う。今日標榜されている株主重視の経営とは距離がある。

配当性向とは

 配当とは株主に対する利益の還元である。そのおもな原資は、従業員・取引先・金融機関・国自治体などの利害関係者(ステークホルダー)への支払を済ませた後の残余、つまり当期利益である。その当期利益に対する配当金の割合を配当性向と呼び、株主への利益還元率を示す・・・(誰が命名したか知らないが、かな漢字変換の精度が低い頃は恥を書いたもんだ・・・)。

配当性向=(中間配当金+期末配当金)÷税引後当期利益

ステークホルダーと損益計算書

 安定配当では、配当性向の値は業績が良いときは低くなり、業績が悪いときは100%を超す(積立金や繰越を取り崩しても配当するので、当期利益よりも大きい)こともある。だから、経営指標としてはあまり意味がない。むしろこの指標を「経営者のケチ度、株主軽視度」と呼ぶ人もいる。2004年度の東証一部の平均は19%、配当金の総額は約3.7兆円。

 しかし、株価維持や上昇を狙ったり、株主(機関投資家)からの圧力など近年の株主重視の経営の流れとして、利益に比例して配当金を増減させる『業績連動型』の配当政策が少しずつ増えている。業績連動型では配当性向が経営指標として意味を持つようになる。目標値を掲げる企業もある。武田薬品は35%、ライオンは50%、セブンイレブンは35%、花王は30%、三井物産は20%、保守的と言われた新日鉄は連結純利益の15〜20%を目標にしている。

 株主還元策として配当が絶対に必要と言うわけではない。一般には、成長途上の企業は業績が良くても、投資機会が多いので、無配にして利益留保を図ろうとするものだ。投資に回して業績向上になれば株主価値を高めたことになる。逆に成熟企業は、投資機会が減るので、手持ち資金が余剰にならないよう配当により積極的に株主還元を図るべきである。最近のM&Aへの対抗策として、株価上昇と安定株主対策のために高配当になることもある。

 アメリカのマイクロソフトは長い間無配だったが近年は配当に転換している。もはや成熟企業の仲間入りというところだ。ちなみに2004年の同社の特別配当は史上最大規模(3.3兆円)であり、これは同期の東証(TOPIX)構成企業の配当合計額と同じ程度といわれるからビックリだが・・・・・世界中が、何度も新型と言う名の、よく落ちるOSを買わされ続けたからね。

配当利回りとは

株式投資の魅力は何も値上がり益(キャピタルゲイン)の追及だけではない。長期保有による配当収入(インカムゲイン)も魅力的である。2004年からの株価(企業業績)回復過程では高配当銘柄が買われてきた。
配当利回り=一株当たり配当金÷株価

配当利回りにより銘柄間の比較や金融商品(預貯金)との比較ができる。典型的な電力株では2%前後ある。成熟産業では株価上昇は見込みにくいので配当で応えるというわけだ。東燃ゼネラル石油という会社がある。高配当で常々有名だ。同社は投資に見合う事業が無いときはキャッシュフローは株主に還元するという方針のため、2004/12期の配当利回りは4%(同時期の1部上場平均は1%)、配当性向は53%だ。

ちなみに、株式会社の元祖と言われるオランダの東インド会社は、約1世紀に渡り年率20%の利回りの配当を続けたと言われている。利益を内部留保しないで株主へ全部分配していたらしい。

社団法人生命保険協会・・・大株主の注文

 同協会が毎年まとめている調査(下表は一部を引用)によると、日本企業の平均的な配当性向は20%台であり、米企業とは見劣りする。安定配当が多いために、業績が悪いときは高くなり、良いときは低くなりがちだ。日本企業の多くは業績が回復しても、負債削減や内部留保に精を出しており、配当の増加は少ないようだ。同協会は米国並みの30%以上を目指すべきだと主張している。もっとも国内投資家は大人しい方で、急に増配をする会社の中には、大株主の海外投資家(投資運用会社)の圧力で増配となるケースがある。余剰資金が多いと狙われそうだ。 

99 00 01 02 03
日本企業 30 24 28 24 21
米国企業 33 29 37 35 33

 最近の傾向として、前述した業績連動型のような姿勢以外にも増配をする企業が多い。業績好調という背景もあるが、株主重視、株価維持がある。低金利下での配当利回り(一株当たり配当金÷株価)を重視する投資スタイルもある。実際、増配を発表すると株価は素直に反応するが、裏返せば減益になると減配に転じる可能性も高い。そのほかにも、例外的だがM&A対抗策としての大幅増配する企業もでてきた。

配当の支払回数・・・四半期配当とは

配当は本決算時の1回という会社もあるが、ほとんどが本決算の期末配当と中間決算の中間配当の2回が多い。一般に3月期決算の会社だと、中間配当は11月下旬、期末配当は5月下旬あたりに支払うことが多い。
 しかし2006/春の会社法改正後は配当の回数制限が無くなり、取締役会の決議で行える。かといって毎月払うというのは非効率だから、四半期ごとに年4回を支払うという会社が少しずつ増えている。何となく毎月分配金をだす投信に似ている。インカムゲイン(証券からの配当や利息)を重視する投資家の裾野を広げそうだ。 (2006.9/3)
 3月末----4----5----6----7----8----9月--10----11----12----1----2---
 従来            期末配当              中間配当
 4半期        期末配当      1Q配当         2Q配当        3Q配当
支払日の例        6/1        9/1           12/1          3/1


純資産(株主資本)配当率(DOE)とは    Dividends on Equity

株主資本配当率とは配当総額÷株主資本 のことである。分母は期首株主資本・期末株主資本の平均(足して2で割る)を使うことがある。株主資本は資本の部そのものであり、それに対する配当の還元率を示す。
 しかし2006年の会社法改正後は資本の部が純資産に組み替えられた影響で、本来なら株主資本から自己資本に変わると思ったのだが、東証の決算短信では純資産配当率と呼ばれている。今でも二つの呼び名が混在使用されているが、以下の文では株主資本を純資産に変更しておく。

 DOEは前からある指標ではあるが、最近注目され始めた配当政策の指標である。安定配当政策から抜け出しつつある企業が増えてきたためと、キャピタルゲイン(株の値上がり)だけでなくインカムゲイン(配当取り)が株式投資のコンセンサスになりつつある時風で注目されだした。

 配当性向は当期利益に対するものであり、当期利益そのものが振幅が激しいから配当性向もブレやすい。対して純資産(株主資本)は短期ではあまり変化がないから、指標として安定して使いやすいというメリットがある。

 なお、DOEは自己資本を使えば、次のように分解できる。
 DOE=配当総額÷自己資本=(配当総額÷当期利益) × (当期利益÷自己資本)
    =配当性向×ROE
 つまり、高DOE企業とは、配当性向が高いかROEが高い企業である

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