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2009/5/26  固定費の違いによる利益の変化のグラフ追加
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損益分岐点の位置(および安全率)、固定費型経営と変動費型経営

 

他参考ページ: 損益分岐点の計算式の求め方と図表  限界利益とは 貢献利益とは


損益分岐点の位置、安全率とは

損益分岐点図表と位置損益分岐点の位置は、損益分岐点÷実際の売上高 で計算される。
例えば損益分岐点(BEP)が80で売上高が100ならば、損益分岐点の位置は80%という。これは損益分岐点比率とも呼ばれる。そして「100%−位置」を安全率とか安全余裕率と呼ぶ。安全率とは「売上がどのくらい減ると赤字になるか」を示している。損益分岐点の位置の方で表現しても良いし、安全率の方で表現しても良い(足して100%だから、粗利率と売上原価率みたいなもの)。

蛇足
実は、損益分岐点の位置と安全率は同じものを指している場合がある。書籍やネットで調べても、上記のように裏表の見方をするものと、同じ値を意味するものがある。どちからが正しいか不明だが、位置と安全率が同じというならば、位置の値が下がるほど安全になるので、80%よりも70%の方が安全であるという表現になり、安全率という言葉とはなじまないと思う。
似たような問題として、限界利益と貢献利益も同じ意味で使われている場合がある。

さて、位置の方で話をしよう。個人的な記憶なのだが昔々、会計の本で、「この値が75%以下なら収益に厚い、90%を超すようなら収益に薄い体質である」と書いてあったのを覚えている。理由は、「売上は10%〜20%程度の振幅はあるが、25%も下がることは稀である」と言うものだった。こういうのはそれを書いた人の個人的な自説だから金科玉条にするほどでもないのだが、なるほどナーと感心したものだった。事実、それまでの日本経済は長い間の右肩上がりの成長と、幾度かの不況があっても、そんなにひどい落ち込みはなかったように思う。当たらずとも遠からずなのだ。

だがしかし。25%はおろか50%くらい落ち込むこともあるのが今の時代。ITバブルの崩壊はすごかった。電子部品業界では売上の大暴落を経験した。

売上高 営業利益
村田製作所 ▲32.4% ▲71% 2001/3→2002/3への変化率

この値は、不況抵抗力と言う意味で示唆に富む。例えば損益分岐点の位置が70%のA社と90%のB社では、売上が20%減ったときの影響はどうなのか。

B社は赤字になり→赤字補填の借入増加→支払利息増加→財務体質の悪化という悪循環に入り、合理化による固定費大幅削減などを強いられる。
A社は減益になるが、いぜん黒字基調であり→内部留保を蓄えられ→つぎの景気拡大に備えて前向きな戦略展開ができる。つまりA社の方が不況抵抗力が強いというわけだ。ちなみに、位置が高い(安全率の低い)企業を腰高経営とも呼ぶ。




損益分岐点のタイプ

固定費型 変動費型
損益分岐点が高い
腰高経営
操業度(売上)がちょっと低下しただけで、大きな赤字を生みやすいので、経営的にはリスクが高い状態であり好ましくない。
固定費の絶対的な削減が不可欠になる。固定費の変動費化も必要だ。そして固定費をまかなうための、安定した売上の確保も不可欠だ。
操業度の低下が赤字を生みやすいが、赤字幅は小さく致命傷にはならない。事業のうまみが少ない構造だ。
薄利体質なので、変動費の引き下げや利幅の薄い商品の撤退、価格アップができるような差別化要素への固定費的投資も必要だ
損益分岐点が低い
安定経営
売上の増加が利益を増幅させるよい状態である。さらなる売上拡大を目指そう。ただし好調な業績は固定費の無秩序な増加を生みやすい。警戒せよ。
売上減少時のリスクに備えて固定費の変動費化も検討すれば万全だ。
低い固定費は安定した利益を約束するが、一方変動費主体による低収益性がネックだ。
固定費投資による変動費のコストダウン、高収益をもたらす差別化投資が重要になる。

固定費の変動費化とは

典型なのは、固定給社員依存から人材派遣やパート労働への活用である。自前主義ではなく他社購入やアウトソーシングの活用、リースやレンタル利用などもある。元々、外注利用はその典型策だが、あくまでも自社能力を超えた受注対策の場合であり、技術や品質など自社の力を補う意味で外注依存している場合は変動費化はできない。
ところで、非正社員の活用は、一企業(ミクロ)としては経済的かつ合理的な経営判断であっても、日本中の企業(マクロ)がこれをやると、大きな社会問題を引き起こしたわけだ。低賃金化をもたらし、購買力の低下、消費支出の削減、ますます低価格化(デフレ)志向となり消費の不振が不況感を増す。このようなことを経済学では合成の誤謬と呼ぶ。

矛盾するようだが、単純に固定費が大きいからダメ、とは言えない。固定費の変動費化によるデメリットというものがある。固定費の大きさは企業の能力の大きさをも意味しているから、固定費の抑制は社内に競争力の源泉(人材スキルやノウハウ)が蓄積されにくくなるのだ。
そこで、固定費の効率的な管理が必要になる。と言っても「これは」というような正解はない。固定費は限界利益を増やすために投入されているから、固定費と限界利益との対比が良いだろう。限界利益÷固定費科目 で時系列的に管理してみよう。




売上高の急激な変化と適応力。固定費型と変動費型の経営の違い

研修用スライド/固定費と損益分岐点

 固定費の多いコスト構造の企業(上記例は変動費比率v=30%)は、売上が少し下がるだけで直ぐに大幅な減益や赤字転落になりやすい。腰高経営と言われている。リストラが不可欠なのだ。
 それに対し、変動費型の経営は利益の変化率は緩やかだ。売上が減る減収局面でも変動費が下がるために、なんとか利益を出せる。不況の時は変動費型企業の方が耐えられやすいわけだ。不況抵抗力があるといえる。
なにやら二つのパターンは、仕事をしない高給取りを抱える企業と、安くて若い人材の企業というイメージだ。ちなみに、景気が良くなるとき(増収時)は固定費型企業の方がうまみがある。売上がちょっと増えただけで、利益がグーンと伸びるから。変動費型企業は景気拡大期ではうまみは少ない。

参考: 損益分岐点とその計算

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