債務超過とは、解散価値とは、BPS(一株当たり純資産)
資産
99 |
負債 100 |
純資産の部
資本金 30
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資本剰余金 10
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利益剰余金 ▲41 |
▲1 |
債務超過(さいむちょうか)とは企業がオケラになること。個人なら自己破産だ。
毎年、赤字が続くとB/S(貸借対照表)の利益剰余金(剰余金とは過去からの利益の蓄積のこと)がマイナスになる。 さらに赤字が続くと資本剰余金を喰い(右では利益剰余金が▲11となるとき)、またまた赤字が続くと資本金まで食い尽くす。とうとう純資産の部全体がマイナスの値になる。これが債務超過だ。
このときのB/Sは、右側の負債が資産よりも大きい状態になる。こうなると資産の部(ようするに全財産)を全て売却処分してカネに換えて、右側の債務(支払義務)を返済しようとしても、返しきれない。
つまり、 資産 < 負債 という状態だから債務超過とよぶ。
逆に、通常の純資産がプラスの状態では、資産>負債となるから、資産超過 である。
債務超過になったから即倒産というわけではないが危険な状態である。左側の全財産を売り払い、債務を払った残りが、その名の通り「純資産」である。だから純資産のことを企業の解散価値とも呼ぶ。解散価値を株数で割れば、株主が受け取る一株当たりの解散価値が求められる。BPS(一株当たり純資産)という指標である。
BPS: Book Value Per Share =自己資本÷期末の発行済株式数
呼び名は純資産だが、新会社法後は分子に自己資本が使われる。
しかし、債務超過のときは解散価値がマイナスだから、株券は紙くず同然!!!、というわけだ。上場企業なら「○○会社、債務超過に転落か」のニュースが出ると、株価は下落の一途・・・・
もっとも、これは帳簿上の話しで、かりに大きな含み益のある資産を処分すれば、まにあうことになる。
いわゆる倒産は、資金繰りがつかなくて、支払う約束の時に払えなくて至る事態だ。だから赤字でも債務超過でもとにかく資金繰りさえつけば、つまり資金の出し手がいる限りは、企業はなんとか継続できる。ようするに、赤字が続いても短期的には商売はできるが、現金がなくなったらその日で終りだ。これは損益と資金(キャッシュフロー)の違いとしてとても大切な事だ。
逆の場合もある。今の決算上(帳簿上)は問題ないけれど、実は帳簿外に債務が隠されていたり、保有する資産価値が極端に下がっていて、実質的には債務超過であるというケースだ。実はこれが問題企業として多い。
債務超過の回避策と資金の出し手
通常、債務超過を回避するために、資本金を追加する第三者割当増資が行われる。あるいはDES(Debt Equity Swap)という負債を株式に替えるマジックみたいな方法、さらには債務免除という名前の借金棒引きをしてもらうなどの方法がある。
しかし、オケラになった人に追加で金を貸す人などいないように、よほどのことがなければ資金の提供者は現われないものだ。資力に乏しい中小企業ならひとたまりもなく倒産だ。経営者は私財を投げ出し、従業員は僅かな退職金で未来を失う。
ところが、不思議なことに、当該企業が大きければ大きいほど資金の出し手が現れる。野放図な経営をしていても、である。傷口の浅いうちに高額なパラシュートで飛び降りた幹部や従業員もいただろう。そのような組織体には自己責任という言葉は死語である。
出し手の名は「コッカ」。
カネの名は「ゼイキン」
2010/1月 財務省の発表によると、2008年度末の国の債務超過額が2007年度末より34.5兆円増え、317兆円になるとのこと。あくまでも試算である。多額の国債発行が続いていることが原因というが、資産評価を厳しくやればもっとひどくなるだろう・・・・で、言いたいのは債務超過の会社をケタ違いの債務超過の国が救えばいいじゃないか、という落語みたいな現実が、何ら俎上にものらない不思議の国ニッポン。
債務超過の事例
2005.4/13、カネボウが過去数年間にわたり粉飾決算をしていたと公表された。その動機は、債務超過転落を隠すものだ。調査では96/3期から6期連続、債務超過になると言う。当時の東証では債務超過が3期連続だと上場廃止になる(2002年からは2期に厳格化された)。それを恐れてのことだ。似たような例はコピーの三田工業でもあったが、カネボウは化粧品会社だから粉飾がうまそうだ・・・
その後の調べでは、カネボウの粉飾は70年代頃から常態化していたと言う。しかも公認会計士までがグルだ。もはや整形美人。手口は、『連結外し』という常套的なものだからだから、特殊なものではない。むしろ会計の番人が用心棒になりやすい仕組みが問題だろう・・・
追加:
2009/秋〜2010/1 JALの経営再建にあたり、JALは実質債務超過と判定された。会計の恣意的な側面が露呈。
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