経営シミュレーション(ビジネスゲーム、マネジメントゲーム)研修による人材教育
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履歴
06.9/13 ゲーミングシミュレーション
06.4/9 ビジネスモデル創造手法
05.8/27 電卓でできるビジネスゲームを追加
04.12/22 ヤンマーのビジネスゲームを追加
12/1 ORゲーム
10/18 経営のためのビジネスゲーム追加


本テーマに関心がある方は情報交流やメールをどうぞ。また他の文献をご存知の方がおりましたら教えてください。

ビジネスゲーム、マネジメントゲームの文献と研究

ビジネスゲーム(マネジメントゲーム,経営シミュレーション)の本と研究

ビジネスゲームの本

--- 文献リスト ---

研修を開発・実施する立場からの私的な考察です。感想内容はあくまでも個人的見解にすぎません。
大学関係からのアクセスが多いですが、著作権に注意し、引用を明記してください。

三つの名前


世界で最初の教育的な事例

それは1956年にAMA(アメリカ・マネジメント協会)で開発された電子計算機(IBM650)を使って行われるTop Management Decision Simulation である。翌57年9月にAMAアカデミーの訓練コースで初めて利用された。これを契機にビジネスゲームという教育技法の歴史が始まったと言ってよいだろう。
しかし、元の名前にあるような「シミュレーション」という言葉ではあまり普及していない。この教育技法を最も有名にしたのは、同じ頃ハーバード・ビジネス・レビュー誌(1958年3-4月号)に発表されたアンドリンガー(G.R.Andlinger)とグリーンによって開発されたモデルである。


ビジネスゲームという名称

マネジメントゲームとビジネスゲームの文献その名は "Business Game - Play One ! "。このモデルは手計算型であり、たいへん安価であった(資料等は当時2ドルで手に入った)ために広く普及し、翻訳されて海外にも渡るなど、いろいろな団体によりいろいろ作り変えられた。当時、アンドリンガーはマッキンゼー社に勤めていたためにマッキンゼーゲームとか、ハーバード・ビジネス・レビュー・ゲームなどとも呼ばれた。・・・以上文献「マネジメント・ゲーム」より

どうやらアンドリンガーのモデルから「ビジネスゲーム」という言葉が広く使われたようだ。いまでも書籍では「経営シミュレーション」という言葉はあまり使われていない。多分、教育用なのか経営科学の研究なのかという混乱が生じて使いにくいのだろう。


検索エンジンでは

2004年5月でのgoogleのインデックス件数は「経営シミュレーション」が6600件、「ビジネスゲーム」5000件、「マネジメントゲーム」2500件の順になる。ちなみに「ビジネス ゲーム」ではなく「ビジネスゲーム」で検索する(余談だがビジネスゲームは金儲けの甘言としても使われている)。教育担当者の立場なら、and検索で「研修や教育の言葉を」入れる方が抽出精度が高まるだろう。 かつてはyahooよりは検索に偏りがないgoogleを推奨したが、今は大差ないようだ。マネジメントゲームは特定商品に関して多い。いずれにしても世間では3つの言葉が同義語的に使われているのが実情だ。


文献では

下の文献リストの中で古いものは1960年前後のものだ。しかもこの教育技法が誕生したときに名著の数々が生まれている。近年の本といえば、運営ツールとしてのパソコン(PC)やWebに依存した内容が多く、経営教育としての深さやオリジナリティーには欠ける本が多い。ネットで調べるとたまに「ビジネスゲームと教育」というようなテーマで 論文的なものを目にすることがあるが、内容的にはさほど優れたものは無い。極論すれば、発表された書籍ベースで見る限りは質的な発展はあまりないようだ。やはり下記書籍のいくつかはこのテーマの研究にとって貴重である。なお、書名だけ列挙して、まだ読んでいない本もあるので、テーマとそぐわない本もあるかもしれない。


文献リストと感想



書名 著者 出版日 出版社

経営のためのビジネス・ゲーム

OR実務協会 58/12/15
昭和33年
中央経済社
 122p、300円
J R

 日本におけるビジネスゲーム研究の草分け的な書の一つであろう。それは学者ではなく、OR実務協会の「読書会」に集う人々の手によるものである。実務家による研究であり、企業内で利用できることを目的に書かれている。ビジネスゲームが日本に輸入されて間もない頃であり、非常に限られた情報の中で書かれたようで、そのあたりの苦労も読み取れる。この意欲的な作品を上梓されたのは以下の方々である(敬称略)。
宮部義一(三菱化成)、間野雄次郎(興国人絹パルプ)、桑田宗彦(味の素)、志賀晃(東亞合成)、福原薫(富士自動車)、与五沢晴之(富士重工業)、犀川健二(日本石油)
 本書には、元祖であるAMAモデルとアンドリンガーモデルの解説が書かれているが、それが主目的ではない。両モデルに対して実務家の視点で遠慮なく批評しており、日本の企業風土に合うように改良したモデルA、モデルBを発表している。さらに、発展型のモデルCや今後のビジネスゲームの応用にも具体的に言及している。驚くことにその指摘は現在にも役立つ内容である。幾つかを紹介しよう。
@製品を複数にすること。単一製品のビジネスなどと言うのは本来ありえないのだが、当時は1製品型のみだからこの欲求は強いだろう。
A市場を複数にすること。アンドリンガー型は24地区もあるから市場選択の面白さを演出するが、AMAが1市場なのでこのような欲求があるようだ。
 この二つの指摘はマルチプロダクト×マルチマーケット構造の指摘である(詳しくは当サイトの他団体との違いを参照)。
B需要を固定ではなく各社の経営努力で変化させること。まさにその通り。激しい競争が行われれば需要は喚起されるものだ。その逆も真なり。
C借入ができること。元の両モデルには借入はないが、間接金融主体の日本(少なくとも戦後一貫して)では当然の指摘だ。たんに経営機能の一つとしてではなく、融資交渉とか投資の採算性吟味という視点からも不可欠である。
D研究開発費は品質改良とコスト引き下げに二分すること。差別化だけでなく原価低減に寄与する開発投資という意味だ。
E税金と利益処分ができること。
F異なった財務状態からのスタート。
それ以外にも、労働者の問題、減価償却、購買の問題等を指摘している。


ビジネスゲーム

横山保(大阪大学教授)、大沢豊(上智大学助教授)、山岡浩二郎(ヤンマーディーゼル常務) 60/09/28
昭和35年
日本経済新聞社
303p、600円
J  

本書はヤンマーディーゼル(株)で行われた、ビジネスゲームの忠実な記録と研修後の分析結果の収録である。研修をドキュメンタリー風に表した書としては「講座ビジネスゲーム」が有名だ。しかし、それより17年も前に克明なレポートが上梓されていたわけだ。日本に導入されて間もない頃であり驚きである。貴重な研究書でもある。
研修の記録は第三章の経営盛衰記に書かれている。昭和34年4月17日から三日間琵琶湖畔のホテルで最高幹部と部課長40名、主審、審判補、副審として若手スタッフ十数名が協力して実施したとある。研修そのものは二日間のようだ。このビジネスゲームはアンドリンガーモデルに少し修正(価格を変更)したもので、ドル表示である。
核となる第三章はゲーム経過が100ページ、その後の検討会(総評と一人ずつの感想と意見の収録)が40ページもある。会話録風なので読むのがたいへんだ。時代物的な表現が気になるが、研修風景としては現在の部長研修でも同じようなものだ。活き活きと描かれている。
研修は10人で1社×4社編成。一年目を共通スタートで練習して、二年目から本番。アンドリンガー式で四半期決算を回す。つぎは各年度の計画締め切り時刻だ。

2需要漸増 9:35,10:10,10:40,11:10
3需要漸増 11:35,12:05,12:45,13:10
4好況 13:35,14:12,14:30,14:52
5不況 15:30,15:55,16:25,17:00
6不況 17:30,17:47,18:10,18:35
7需要漸増 19:00,19:23, 9:00,9:45
8好況 10:20,10:47,11:15,11:35
9好況 12:00,12:25,12:55,13:15
10好況 13:40,14:07,14:30,14:50
11好況 15:13,15:31,15:50,終り
 一年を二時間ピッチでやったことになる。実際は計画作成と結果の決算書作成に分かれるので、計画のみは15分間ビッチだ。10年間(40期)をやっている。昼食など取る時間がないような進行である。

 私もかつて日本能率協会の幹部セミナー(EDC)でシミュレーションを担当してた頃、このペースでやったことがある。ただしパソコン一台を使うものであるから、手作業での本書の事例は驚異的だ。人数が多くて細分化されていること、スタッフが多いことが実施可能な要因だろう。

ゲームの細部に関する記述が多いがアンドリンガーについては類書も多いので省略する。本書の特徴は実務家主導で行われた幹部研修であり、ビジネスゲームが当時どう捉えられたかが気になる所だ。
目的は「勝つことではなく経験することである」とある。『真の理解には経験ほど勝るものはない。経験こそ最上の理解の方法である。』 と明記してある。
中でも検討会におけるX主審の述懐が印象的だ。『かつて生産性本部でのこのセミナーを受けたときのこと。初日の業績が悪くて、翌朝は出席が嫌で仕方なかった。無理やり出席したのだが、急用とかの理由で他に三人も欠席がいた』。
体験が目的であっても、業績に一喜一憂せざるを得ない。業績が悪いと たとえゲームといえども落ち込んでしまう。その局面は業績不振のときの幹部の精神的な重圧感の「体験」そのものと言えよう。


マネジメント・ゲーム - 7つのノンコンピューター・ゲーム

J.R.グリーン、R.L.シソン著、加瀬 滋男 訳(大阪府立大学工学部教授) 61/11/20
昭和36年
日刊工業新聞社
 142p、440円
J RR

原題 Dynamic Management Decision Games  (Including Seven Noncomputer Games)
著者たちは、本書がケーススタディとも違い、娯楽のためのゲームとも違うことを強調するために「ダイナミック・マネジメント・デシジョン・ゲーム』と称した。訳者は、これを簡単にマネジメントゲームとしたが、それはビジネスゲームと同義語的に使われている。
そもそも従来のビジネスゲームはコンピュータ(とても高価なもの)を使い、大企業や特定の人々のみしか経験できず、その価値や感動は限定されていた。副題にあるように7つのゲームは全てノンコンピュータ、つまり手計算型であり、プレーヤーは一人でも実施できるワンマン・ゲームであり、大企業以外の経営者、候補者等がビジネスゲームを体験できる。教育者や訓練担当者、学生等のために書かれている。
前半の3章では、「マネジメントゲームの価値」、「マネジメントゲームの作り方」、「マネジメントゲームの指導と変形法」が語られているが、やや大味な感がする。もう少し紙数をさいて論じて欲しいテーマだが、それは序文的な扱いであり、本書の価値を減らすものではない、本書の価値は以後に続く7つのゲームのディテールにある。在庫管理ゲーム、人員割当ゲーム、小売部運営ゲーム、日程計画ゲーム、販売管理ゲーム、トップ・マネジメント・ゲーム、市場商談ゲームの7つがインストラクションマニュアル風に書かれている。各ゲーム内容は各タイトル名からの印象よりもずっとシンプルなのだが、堅実な内容で丁寧に作られている。
例えば、トップマネジメントゲームは需要F(価格、プロモーション)が単純な構成だが、製造機能・設備投資・タイムラグもあり、コンパクトにまとめられている。最後に市場商談ゲームを持ってきているのは、ゲームモデルの枝葉の多さが大切なのではなく、コミュニケーション能力・交渉能力まで取り込むことでマネジメントゲームが経営能力の育成に資することを強調したいのではないかと思う。
本書は古典的な名著である。シンプルだがけっしてお遊びでない内容は今でも価値がある。教育において十分使える!。これ以下のレベルでありながら、わざわざExcelを使って大げさに具現化する例もある今日、紙と鉛筆のみで思考をめぐらすことが大切だと著者達は言っているように聞こえる。ノンコンピュータの意味がそこにある。


ORゲーム

加瀬 滋男(大阪府立大学工学部教授) 62/2/28
昭和37年
日本能率協会
155p、680円
J R

 今日ではOR(オペレーションズ・リサーチ)という言葉をあまり聞かないが、元々はORの方法論の一つとしてシミュレーションがあったらしい。今ではシミュレーションのほうが認知度は高い。本書はORの専門家によるものである。現在のマネジメント・ゲームは全社ゲームでありプレーヤーはトップマネジメントに限定されている。だからミドルや中小企業の人たちにもマネジメント・ゲームの良さを体験させたい思いとマネジメント・ゲームを題材にしてORの普及啓蒙を目的とした本である。ゲーム形式でOR理論が学べる点を生かすべくしてマネジメントゲームを作ったとある。実際のゲームモデルは機能ゲームが主体である。在庫ゲーム、日程計画ゲーム、進度管理ゲーム、受注計画ゲーム、職員配置ゲーム、出荷計画ゲーム、運搬管理ゲーム、検査運営ゲームについてのやり方やワークシートがある。内容的にはマネジメント教育よりも、行列計算式などの数理処理が多い。


マネジメント・ゲーム - 経営教育の新手法

ジョエルM.キッビー、クリフォードJ.クラフト、バート・ネーナス共著、植木繁、磯貝憲一共訳 62/11/30
昭和37年
日本能率協会
p397 1500円
J RR

原題: Management Games--A New Technique for Executive 著者はレミントン・ランド・ユニバック社の教育部長と教育課長、ピート・マーウィック・ミッチェル社の経営管理部長である。
第1部 マネジメント・ゲームの背景:理論と実際、第2部 マネジメント・ゲームの運営、第3部 ゲーム設計、第4部 ケース・スタディ(これはマネジメントゲームの実例とその解説のこと)、第5部 参考資料 かならなる。本書を読むと、当時はコンピュータメーカーがこぞってマネジメントゲームを開発していたことがよく分かる。あくまで自社コンピュータの普及、販売が目的だが、開発自体がお金がかかることもあり、資金と人材力のあるコンピュータメーカーのこのような投資が、マネジメントゲームの発展に寄与したことは間違いないだろう。本書も上記書籍と並んで名著の一つである。
 第1部の導入部分は、経営教育の第一線に携わる実務家の翻訳によるために訳が練れていて分かりやく書かれている。面白いのは、呼び名をめぐっての見解だ。ゲームには「遊び」という意味があり教育的には不適切であり、シミュレーション練習(Simulation exercises)とかdynamic decision making sessinos とも呼ぶ、しかしゲームと呼ぶ風潮が強いのでそれに逆らわずに「ゲーム」という用語を使うとある(p20)。実務家らしい見解であり、マネジメントゲームは参加者、ルールの存在、採点法があるために「ゲーム」であるとも言い切っている。そして、マネジメントゲームが経営管理教育に大きく貢献できたのは、時間の次元を取り入れたこと、フィードバックが客観的であることという指摘は今でも他の教育技法に対して優位性を持っていると思う。
とにかくアメリカにおけるマネジメントゲームの事例が豊富に載っている。参考資料として、200以上の研究者や機関に質問して113通の回答を元にまとめたとあるように、たくさんのコースについて、名称、モデル概要、運営方法、問合せ先が要約されて載っている。当時は百花繚乱だった!!!。

とりあえず第17章に日本のマネジメントゲームの事例もあるので、それを紹介しよう。
手計算型の3社による耐久製品(1種類)の製造販売である。参加者は3〜5名の重役と2名の事務員(決算係)で構成。2ヶ月を1期として進める。3期毎(6ヵ月毎)に収入報告書(P/Lを単純化したもの)とB/Sが発表される。マーケットは5つ、各エリアの特約店への販売をする。プッシュ政策は販売促進、広告、価格(15万円ほど)、分割による支払条件、品質改良投資があり、これらでシェアが決まる。他の計画項目として各種調査、借入、設備投資などがある。意訳すればこんなところなのだが、当時ではまさに経営幹部向けコースだった。それにしても昔の幹部はこの程度の決算書が作れなかったのだろうか?。
 当時、日本能率協会のマネジメントゲーム・コースで利用されたとあるが、私自身は知らないので、それほど長くは使われなかったと思う。訳者の磯貝憲一氏(当時日本能率協会理事、後、文教大学教授)と私は日本能率協会時代に数多くの経営シミュレーション研修を担当した間柄である。

新しい企業分析とビジネス・ゲーム

上領英之 64/11/05 金融財政事情研究会    

ビジネス・ゲームの手引き

千坂研究所 68/09/10 同友館 p?  850円 J R

経営コンサルタント千坂宰太氏による書。戦後日本に導入されたビジネスゲームはハーバード方式であった。それを日本的経営への適応を試み、教育の場で実践した書である。変更箇所とは、元の2年が1周期の経営サイクルを日本式の4年周期にした、受注残方式にした、借入を不動産担保主義に改めることでの限度設定、などである。しかし何故か、「慣れればよいのでドル表示」というのは理解に苦しむ。察するに、単純な円換算では全体のバランスが崩れ、さりとて再構築するのはたいへんだったのではないだろうか・・・。
当時の研修風景をかいま見ることができるのは面白い。4〜5社編成は適度な設定だが、一社4人(社長、営業部長、製造部長、経理部長)というのはずい分と少ない設定だ。当時の経営教育におけるビジネスゲームのインパクトからすれば6人くらいいても不思議ではない。対して審判団は10人位。その陣容は、審判長、乱数表係、検算係、記入係、記録係、連絡係、指導係(各社別に4人)、と大所帯だ。ゲームの年数は10年〜20年とある。10年とは40期であり、10〜15時間でできるとある。20年は20〜25年とある。至れり尽くせりの審判団がいるとしても、かなりの進行ピッチである。
本書はビジネスゲームの運営マニュアル的であり、この教育商品の販売促進も兼ねているようだ。

経営シミュレーション

河野豊弘(学習院大学教授) 73/5/25 丸善
p243、 2500円
J  

本書は、企業の長期的・総合的な方針を決定するための経営シミュレーションの研究書である。教育訓練のためのシミュレーションはビジネスゲームであり、本書は真の意思決定のためのシミュレーションであるとしている。前者のモデルは企業の将来システムを正確に表現していなくてもかまわないが、後者のモデルはできるだけ正確に模写したモデルが必要であるとしている。具体的にはコンピュータ化されたK2と呼ぶモデルが提示されている。内容は殆どが経営モデルの構築に関するものであるが、次の分類視点はビジネスゲームにも役立つ。
例えば、モデルの詳細さからみた分類では、@一年単位か月次か、A製品別に細分化するか、事業部別か、単一製品に換算して全社一本か、B地域別か全国一本か、C在庫の増減を入れるか、D原単位や材料価格を定義するか、費用率で簡略化するか
 モデルの性質からの視点では、@環境との相互関係の有無、A相互関係の多少の違い、B適応過程またはユーリスチックな過程のあるモデルと政策変数を自由に決定するモデル、C最適な決定過程の有無、D時間的な波及過程の有無、Eパラメータを回帰分析や技術的見積もりで推定するモデルと主観的に推定するモデル

戦略的意思決定

秋葉 博(神戸商科大学教授) 73/9/10 中央経済社
p231、 1500円
   

講座-ビジネスゲーム1 入門編

柴田典男、許斐義信(慶應義塾大学教授) 77/03/01 中央経済社 J RR

講座-ビジネスゲーム2 応用編

77/07/20 J RR

講座-ビジネスゲーム3 技法編

77/05/15 J R

菊池寛の言葉を模した「世の中は一局の棋なり」に始まる、この三部作は日本におけるビジネスゲーム研究の優れた成果といえよう。
第一巻は入門編となっているが、ここが最も具体的なビジネスゲームの展開手順である。「ビジネスゲームとは何か」から始まり、実施風景をドキュメンタリー風に述べている。経営教育としてのネライ、ビジネスゲームの起源等が書かれている。有名なアンドリンガーモデルの系統にあるKS式ゲームモデルが解説されている。
第二巻の応用編は、ビジネスゲームを人事や組織問題の解決手段につかえないかと言う視点で書かれている。本編は、かなり大胆な提起であり研究者としての視点だと思う。
個人的にはそこまで踏み込むことはしない方が良いと思っている。実際、私自身も研修の場を通して、類似の体験をしている。参加者の行動をアセスメントする機会は時々ある。後日、研修担当者と突合せしていると、けっこう的を射た指摘になっている。しかしそれ以上のことには触れない。シミュレーション研修の目的は既定であり、人の評価、人の組み合わせ問題、人事全般、組織問題などへ拡張しない方が良い。それらの問題解決には個別のアプローチがあるのだから、効能を広げすぎると本末転倒になる。似たようなことに、ビジネスゲームをしながらプレゼン能力の研鑽になるなどと主張する人がいる。発表場面があるから訓練にはなるが、けっして固有のプレゼンスキルを磨くわけではない。そんな運営は稚拙だ。何を目的とした研修なのかが不明確な運営は成果もぼやけるし、時間のムダだ。
第三巻の技法編は、ビジネスゲームのモデル設計と研修計画について書かれている。例えば、第1章「ゲームの場」において、「メンバー構成(人的資源)が他の経営資源を動かす」は事実であり、それに対する講師の理解と参加者への伝え方で、経営教育か楽しいゲームに分かれるのである。第2章ではメカニズム設計の注意点として「柔軟性のあること」、「ルールが白紙に近づくほど発想が自由になる」、「意思決定時間は少し短いかな、と感じるくらいがちょうど良い」などなど、有益な指摘が多い。4章の「運営方法とインストラクターの役割」に書かれた幾つかは、今日のビジネスゲーム研修にも引き継がれているはずである。第一巻と並んで有益な書である。

ビジネスゲームの実際 改訂版

千坂宰太 78/04/25 同友館    

人事屋が書いた経理の本

西順一郎、梅本到、坂本冬彦、阿部勝幸 78/07/05 ソーテック社
p226  1000円
R

ビジネスゲーム

立正大学産業経営研究所ビジネスゲーム研 80/01/28 同友館
p194  2000円
J R

ゲーミング・シミュレーションモデルの作り方

酒井重恭(東京理科大学教授) 80/05/10 日本経営出版会
p236  2500円
J  

序文で、本書はゲーミング・シミュレーションの入門書であると書かれている。また企業人のための総合研修書、学生のための経営学テキストとも記されている。しかしこの耳慣れない「ゲーミング・シミュレーション(以下GSと略す)」とは何を意味するのだろうか?。「ゲーミングとは、モデルにより経営目標の最適化を試みる学習のこと」とあるのだが、ようするにGSとは経営教育や技法研究用のシミュレーションのことのようだ。少なくとも狭義においては、経営シミュレーションやビジネスゲーと同義語で使っている。なお、GSは勝負が目的ではなく、貴重な体験を得るのが目的であると指摘しており、この件で経営シミュレーションと同じと確信してホッとした。それにしてもなぜGSなどと言う表現が使われたのだろう・・・
 さて、内容は日本における本格的な経営シミュレーション・モデルの作成事例である。前半は企業モデルの構造定義と決定要素等の解説であり、後半の4章はプログラミング解説、5章は研修の運営である。こんな要素を入れて作ると良い、という指摘と「本モデルでは・・・」の記述が混在するために、一体どんなモデルを作ったのかは前半を読んでいても部分しかつかめない。4章のプログラミング解説は参考にはならないが、ここの出力帳票を見ることで、ようやく全体がつかめるという本だ。
耐久消費財の製造販売業である。製品はA,B,C,Dの4種類(それぞれにPLCを設定しているのが特徴。PLCにやや拘ったシナリオがあるようだ)。市場エリアは4つで、販売チャネルが一般店(3)と量販店(1)の二種類。つまり基本構造は4商品×4エリア×2チャネルとなる。これ自体はそれほど複雑ではない(例えば私のMARKやCOSTでも似たようなものだ)。
 しかし製造原価の明細が10項目あるように製造周りはかなり複雑。要員管理では製造員、マシンキーパー(ラインの保守要員)、職長、技術者、技術管理者、営業員、営業管理者が登場するから多い方だ。この顔ぶれからして製造にやや偏重したモデルという感じもする(ようするにマーケティング回りはやや寂しい)。そして採用だの配置転換、昇格、給与、賞与だのが絡むからとても手計算ではやっていられない。もちろんコンピュータ処理だが細事に凝りすぎるようにも思える。このあたりのモデル作りは基本思想の違いが絡むだけに難しいところだ。また製造関係が精緻であっても、設備投資は製品別に1種類しかないのは片手落ちの感がする。
 意思決定要素は多いほうで、製品や市場別に計算されるようだ。興味があったのは生産要素における工数概念だ。本来なら当たり前だがシミュレーションモデルではけっこう面倒。工数が入らないと生産企業のモデルとしては「らしさ」が欠ける。
 本書の内容は豊富なのだが、この経営モデルを実際にフィールドで試した様子は書かれていない。想定される研修スケジュールを見ると、3日は不可欠(事前自己研修も推奨)、合宿が望ましい、というのはうなずける。経営サイクルは半年型らしく(この当たりの記述が無いのだが・・・)、5回(二年半)をやる。1サイクルは2.5時間。パンチとコンピュータ・オペレーションに1時間必要とあるように、当時では実施すること自体が大変だったことが伺える(今日ならパソコンで十分だ)。
 ちなみに、第2章は日電東芝情報システム(株)の松本雅雄氏、第3章と第4章は東京芝浦電気(株)の横田栄一氏が執筆とある。この両社で実際に経営幹部教育に使われたことと思うのだが、そのあたりも伺えるとよい。或いはバージョンを重ねて、今日でも使われているのだろうか・・・或いは日の目を見ることは無かったのだろうか?

戦略教育MGの活用と実例

折原清次 80/08/28 ダイヤモンド社    

ビジネス・ゲーム (日経新書)

柴田典男、許斐義信 81/10/23 日本経済新聞社
 p181 550円
* R

本書は、「講座-ビジネスゲーム」三部作のコンサイス版といった感がある。某大手企業の中堅管理者を対象に行ったビジネスゲーム研修を素材にして、経営上の問題(マネジメントの原理・原則)を考察したものである。扱っているモデルはAとBという二つの生産財となっており、独立した市場を持つと言う前提だ。これは前著で紹介されているアンドリンガーモデルであり、それを2製品(生産財)に拡張したモデルのようだ(なぜかドル表示のままである)。それはさておき、この本では研修の姿を描き、定量データのみならず定性的な分析をしているのだが、これは実際に受講経験がないと、理解しにくいし、読みにくいだろう。一般の人が呼んでもチンプン感だろう。
さて、両先生のビジネスゲームに関する本の特徴は、ゲームモデルそのものにあるのではなく、運営実施を通しての教育効果、組織問題への解決につながらないかという視点で臨床的な分析をする点にあるようだ。組織のあり方、チーム内のリーダーシップのあり方、コミュニケーションのとり方、などがメンバーの意思決定や討議内容の観察を通して述べられている。ビジネスゲームに限定せずに経営教育と言う立場から参考になる。

PC-8001による最新ビジネスゲーム入門

鵜沢昌和(青山学院大学教授)、林勲、田原正弘 82/08/20 日本能率協会
p198 2500円 
* R

日本のパソコン黎明期の名機NEC PC-8001のBASICプログラムを使ったビジネスゲームの入門書である。職能別ゲーム(つまり単機能型)として、価格決定ゲーム、在庫管理ゲーム、販売管理ゲーム、財務管理ゲーム、生産管理ゲームの5つがフローチャート、プログラムリストと共に紹介されている。パソコンハードが前面に出ているように見えるが、内容は単なるプログラムの開示ではなく、アルゴリズムの解説もあるので研究者・開発者には参考になる。当時、個人的にもこの内容を解析し、自分のやり方と同じ点や違う点を見つけたように記憶している。簡単なゲームに限定したとあるが、5つのゲームを統合すれば職能型ゲームの対極である全体管理型ゲームになるだろう。また、第一章ではビジネスゲームの歴史的な解説にもふれているので分かりやすい。ビジネスゲームの元祖と呼ばれるアンドリンガー型とAMA型の対比は分かりやすく書かれている。

マネジメントゲーム/情報化時代のマネジメント教育

児玉理一郎 85/10 日本電気文化センター
p138 945円

パソコンによるビジネス・ゲーム入門

高橋三雄、藤森洋志 86/04/25 日本経済新聞社
p213  2800円
* R

経営シミュレーション    経営情報学講座

吉田 茂 88/10 オーム社 AO  

Lotus1‐2‐3による経営シミュレーション

上山 義尚 91/09 共立出版 3670円    

MG教科書A

西順一郎 92/10/20 ソーテック社 J R

経営シミュレーションの原理・原則―ビジネスゲームで自分を磨く    原理・原則シリーズ

ビジネスゲーム研究グループ 93/11 総合法令 AO

電卓でできるビジネスゲーム

J・ロナルド・フレイザー
市川 貢
95/4/20 中央経済社
p114  2000円
AO R

従来のビジネスゲームは企業向けなので複雑であり、学生用には適さない。そこでJRフレイザー著「Management Simulation Games, Arbogast,1986」を元にして電卓でできるようにし、内容を学部生向け学習にも適するように書かれたのが本書である。 章別に10本のゲームが収録されている。各ゲームごとにその内容、具体的な計算手順、実施手順、意思決定の記入用紙の見本がある。特に、計算手順は電卓で試すのに困らないように詳しく書いてあるから、一読して試すとすぐ分かる。
1.価格決定、 2.価格戦略、 3.価格−生産戦略、 4.価格−生産−マーケティング戦略
5.競馬ゲーム、 6.ソッケー・マネジメント  7.ピストロ・マネジメント
8.製造業者と小売商  9.生産スケジューリング  10.バーテンダー
 1章は単純な価格のみのゲームである。それに他社や期間の相互作用を持たせたのが2章、そこに生産量という項目を追加したのが3章、さらにマーケティング投資を加えて3つの意思決定項目へ増やしたのが4章である。
ことほどさように、章のタイトルから連想するほど大げさなモデルではなく、簡単なものが多い。しかし1章から4章への流れは、学生の授業用として無理なくやさしく体験できる内容と思う。意思決定項目は1〜3個以内である。
 さて、この本は電卓でできることがウリだが、今日では電卓ではなくExcelを使うほうが適しているだろう。ゲームであるから勝ち負けが問われている。勝ち負けは累積利益の多さである。つまり損益中心でありB/Sの視点は無い。
 各ゲームでは何を学ぶのかと言う記述は一切無い。1章のゲームから変動費と固定費を取り入れているが、そのわりには限界利益という管理会計の視点がない。もっとも変動費と固定費という解説も無いので、予備知識がないと意外と理解できないかもしれない。このあたりは、講義での教師の裁量になるのだろう。授業の素材としての本のようだから、本のみ買って読んでもつまらないかもしれない。
個人的には「製造業者と小売商」のゲームが面白い。交渉型だから集団でやるにはちょうど良い。学習テーマや会計的な解説を入れれば、学生向けの類書である「ビジネスゲーム演習」よりは教材としての使い勝手が良いように思う。モデルの種類も多いし、多人数で紙と電卓、黒板でワイワイガヤガヤできそうだ。
 と思っていたら、実際に授業にお使いの先生がいました。文教大学の幡鎌先生のブログ情報化の現状と未来


ゲーミングシミュレーション

新井 潔、, 出口 弘、兼田 敏之、加藤 文俊、中村美枝子 98/08/03 日科技連出版社 p211 2600円 A
 R

表題は何を指すのか、本書は何のために書かれているのかが最も関心があるところだった。
第一章 ゲーミングシミュレーションとは何か、第二章 社会的問題解決手法としてのゲーミング 第三章 ケーミングシミュレーションのデザイン 第四章 メディアとしてのゲーミングシミュレーション 第五章 ゲーミングシミュレーションにおけるファシリテーション。この本書の構成だが、ゲーミングシミュレーション(以下GSと略す)については統一的な定義があるわけではないようだ。「簡単に言うとゲーム的側面をもったシミュレーションの活動」とあるが、様々な定義や見方が紹介されており混乱する。共著の著者間での統一はしないとあった。いわゆる「ビジネスゲーム」より広い範囲を対象としており、国際関係論、社会学、都市計画などの分野も扱うようである。また教育場面での講義法と比べての意義なども探っている。
 その意味では個人的な関心が薄れてしまったが、第三章の「たかがゲーム、されどゲーム」の項にGSには次の三要素、競技性、模擬性、役割演技性が含まれるとある。それは、とても納得できる視点である。実例として行政の都市計画(街づくり)をテーマにした個人用プレイのLINUS、グループプレイのDOWNTOWNが紹介されている。
 GSの運用論としてファシリテーションやディブリーフィングについても書かれている。最近はファシリテーターという表現が増えてきた。日本では単に教師、講師という呼称が一般的だ。カタカナ呼びすれば質が上がる分けではないが、役割を再定義し再認識するにはよいだろう。ファシリテーターとは裏方に徹して演技指導しない演出家とある。学習者の側に立った援助すべきであり、当人の気持ちと関係なく気づきを押し付けてはいけない、ともある。しかし進行係ではない、ゲームの中に介入する役割があるとあるが、具体的にどのような介入がよいのだろうか。
 ディブリーフィングとは事後討議、分析・検討をさすが、元は軍事演習における事後分析を指した言葉だそうだ。たんなる振り返り、まとめ、とは違って、GSの体験を他のプレイヤーと共有して積極的に意見や印象を交換することを目指した、積極的な「振り返り」という意味のようだ。
GSは体験学習であるから体験は主観的・個人的であり、部分的なものである。だから、ディブリーフィングが無ければ参加者は自己の体験から勝手な思い込みをするだけだ。ディブリーフィングの目的は学習効果を高めることであり、具体期には二つの目的があると言う。一つは、各人の部分的な体験を紹介することで全体像を把握すること。第二は、GSにおける行動を客観的に見つめなおすことだ。行動(意思決定)の意味を再分析してその妥当性を客観的に評価することだ。これが無ければ、「ああ面白かった」「勝ててよかった」「負けて悔しい」だけで終ってしまうのだ。
 まさにその通り。個人的にも関心があり悩んでもいるところだ。参考になればと思ったのだが、実務的な視点ではやや少なかった。「どうしたら勝てたのか」というような表層的な視点に囚われずに、参加者(プレイヤー)の意図的、偶発的体験を普遍的な教訓へ高められるようなまとめに日々に悩んでいる。
 本書は、範囲が広いのはもちろんだが、文献からの引用が多くて読みにくい点が気になった。


MBAビジネスシミュレーション

ビジネスゲーム研究会(柴田典男、許斐義信、岡田哲男、大藪恵司) 99/08/05 総合法令
p258 2000円
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著者の柴田氏、許斐氏は「ビジネス・ゲーム(日経新書)」の著者である。本書はビジネスゲームの過程ごとに講座という形を取りながら、経営スキルや経営視点の解説を取り入れた内容である。ところが、前作を再度読み比べたら、なんと殆ど同じ。本書の前書きに「某機械関連の経営管理者」を対象に実施したゲームの進行を素材いにしていると書いてあったが、前作と同じだから昭和50年代前半の実施例なのだ。研究テーマが同じだから、前と同じ結論があっても驚かないが(読んでいて前と似ているなーと思ったが)、これほど同じだと「復刻版」という感じだ。
 事例モデルも前作のA,B2製品×24地区モデルで、販売員は都市部では2地区を訪問できると言う典型的なアンドリンガーモデル。決定的な違いがある。前作はドル表示だが、ようやく円表示に『進化』した点だ。ここで不思議なのは昭和50年頃のドル表示モデルが、単純に単位を「円」に置き換えただけのことだ。為替換算していないから数値は同じまま。これで企業モデルのバランスが取れるのだろうかという疑問だ(本質的な問題ではないのでこの位にしよう)。
 ところで講座と言う形で経営スキルに関する解説を入れている。財務や経営戦略についての解説が多くあるのは良いと思う。資金運用表から移動表まで取り入れて資金分析をしている箇所もある(執筆時点ではキャッシュフロー計算書は公認されていないので利用されていない。今読むと奇異に感じるかもしれない)。しかし財務指標の解説はビジネスゲーム事例との整合性が薄い。一般論であり、むしろ一般の会計本の方が詳しいだろうから中途半端な感じがする。経営戦略も各種フレームワークをさらっと紹介しているにすぎない。具体的な実施事例をモニターしての考察らしいが物足りなさを感じる。具体的な記述は組織やリーダーシップスタイル、コミュニケーションのあり方等と業績との因果関係だが、このあたりは両氏の十八番なのだろうか、初期の「講座ビジネスゲーム」や前作とほぼ同じなのだ。
 研究者ではなく、研修講師として思うのだが、研修実施例をベースに戦略論を解説するのは限界がある。生の企業事例からの戦略論なら書きやすいので本も多い。しかしビジネスゲームではモデルの限界(深さと幅が欠ける)から単純にならざるを得ない(戦略の要点を擬似体験で理解させるにはうってつけだが・・・)。そもそも商品やサービス、マーケット、人間が架空であり、リアル(現実)ではないのだから深堀に無理がある。それに実施例のサンプルが常に俎上に載せやすいとは限らない(受講者が初めから戦略的発想を豊かにしてプレイしているわけではないし、戦略フレームに当てはまるようにホンモノの経営が行われるわけではない)。
 前作と同じく、本書もビジネスゲームを体験し、教育技法として関心がある人でないと読みきれないだろう。残念ながらMBAを志す人の学習書ではない。経営スキルの学習なら各論別の専門書の方が内容も濃い。個人的には、両先生の前作から20年近く経っているので、大きな質的変化を期待したのだが残念。MBAという冠を付けるだけで本が売れるものだろうか・・・。機会があったら、「講座ビジネスゲーム」を再読して違いを見てみたい

 蛇足ながら、Amazonのレビューに「今はコンピュータビジネスゲームが注目であり、紙ペースのモデルは古い」というような趣旨の記述がある。「CGの時代だから油絵は時代遅れ」と同じだ。大切なのは何がどう描かれているかだろう。関心がある方は、例として下の「ビジネスゲーム演習」との比較をお勧めしよう。


ビジネスモデル創造手法

白井宏明(横浜国立大学教授) 2001/4/20 日科技連
p172 1900円
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本書はビジネスモデルそのものを作るための方法論に関する内容である。その方法を、コンセプトモデル、シミュレーションモデル、オペレーションモデル、ゲーミングモデルの順で作っていくとある。
コンセプトモデルとはビジネスモデルを構成する要素間の関係をダイアグラムで表すことで漠然としたものを可視化するのが狙いだ。続くシミュレーションモデルでは要素間の関係を数式で定義することで、コンピュータシミュレーションができることを狙うものだ。3番目のオペレーションモデルはビジネスプロセスに注目して活動単位に入力・処理・出力を定義したものをさす。これにより個人や組織のルールが明示化されてコンセンサスが形成されると言う。

最後に、ビジネスモデルが実際の場で運用できるかを確認するために、ビジネスプロセスの可能性を模擬的に評価する手法としてゲーミングシミュレーションを取り上げている。つまりビジネスゲームにしてテストするというものだ。ここが一番関心のあるところだ。事例の一つとしてオフィス環境改善をになうファシリティマネージャ(FM)業務に関するモデルが紹介されていたが、さらっとしていて分かりにくい。

  もう一つMBA教育の事例があった。筑波大学大学院ビジネス科学研究科による社会人学生向け授業で使われているというものだ。「アレクザンダー・アイランド」という名前のビジネスゲームである。3〜4名で10チームで行われるらしい。架空のサイモン島、ハーバート島の客に単一商品を通信販売する。購買特性や需要が異なる二島に向けて、各社は商品を仕入、広告をうち、価格を決めて販売する。商品は発注2ヵ月後に入庫する。
 ゲームは1ヶ月単位で進む。意思決定要素は、島別の販売価格と雑誌広告、2島共通のラジオ広告、商品仕入数、銀行借入と返済らしい。一部を除き主に現金決済である。島と言うのはたんに面白そうにする設定に過ぎないだろう。仕入のタイムラグのみが変に突出した感じだか、こんな単純なモデルがMBAの教材になり得るのかと驚く。学生相手ならともかくMBA志向の社会人向けに本当にやれるのだろうか。どの程度のレベルの人にどの程度の力の入れ込みでやるのか不明だ。

 最後にブラウザーで行うビジネスゲームの開発言語に関する研究が載っていた。プログラムジェネレーターのようなものらしくて面白そうなテーマだ。 筑波大学社会人大学院で「高度職業人のためのビジネス教育ツールの開発」として文部省の補助金を受けて進められている。コンピュータの初心者レベルの人にもできるような簡易な記述言語で書いたソースはC言語、CGIやHTMLに変換されるという。紹介事例はサプライチェーンマネジメントのモデルである。と言っても、これもタイトルとはかけ離れてあまりにも単純な例なのでとても実用性を評価できない(部品メーカーの所在地が本文と画面図で不一致)。執筆時点ではこの程度のモデルしかなかったのだろうか?。公費を使った研究だから成果が開示されているかと期待し、googleで探ってもヒットなし・・・(2006/4)
ちなみに、個人的には他に有益なツールがあると思っている。


ゲーミングシミュレーション:未来との対話

Richard D. Duke (原著), 中村 美枝子,市川 新 (翻訳) 2001/09/21 アスキー
p235  2800円
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熊 
 


ビジネスゲーム演習

野々山隆幸(横浜市立大学教授)、高橋司、柳田義継、成川忠之 2002/05 ピアソン・エドュケーション 2100円 T R

 今でも(2004/5)googleの「ビジネスゲーム」で本書とその関連サイトが上位に来るようだから、比較的なじみのある方も多いだろう。通常、書籍はいろいろな意味で強い影響がある。しかしながら、この文献リストにある殆どの本は廃版になっている。ビジネスゲームの本で版を重ねるのは至難の業だ。本書はどうなるだろうか・・・
 表紙のデザインがかっこよいので期待して開いたのだが、その中身は・・・。概要はパソコン販売という設定(あくまでも名目)で、4社で、四半期決算を4回やって累積の純利益を競うモデルで、名前はBG21という。意思決定項目はシンプル、たった4つ。予想受注数量(予想販売数だから厳密にはinput項目ではない)、仕入数量、販売単価、広告費である。売上の決定は価格と広告のたった2つ。Excelを使ってたったこれだけとは驚き。むしろ手計算で十分だ。P/Lは7行、B/Sの左は現金と商品のみ、右は借入金、資本金、累積純利益の3つと単純。
 Excelファイルも付属して自学自習に使えるようになっているのは良いが、本書は大学生あるいは商業高校生向けと思う。モデルとは別に発表用シートを見ると、とてもビジネスマン向けではない。元々ビジネスゲームを研究する人向けでもないと思う。学生向けにP/LやB/Sのさわりを短時間で見せるにはよいのかもしれないが、それなら会計回りの解説がなくては意味が無いと思う。126ページで画面図や表が多くてこの価格は高いなーというのが本音。買う前に詳しく知りたい方はググってみよう。


 ところで、現在でも販売されているビジネスゲームの本はというと本書を含めて数冊しかない(アマゾン調べ)。その意味では、やはり古典と言うのは大切だ。邦書の中で今読んでも「講座-ビジネスゲーム 1、2、3」とか「経営のためのビジネスゲーム」は名著だ。また「マネジメント・ゲーム - 7つのノンコンピューター・ゲーム」も具体的な内容で優れている。 名著が廃版ではまことに残念。



ビジネスゲームで学ぶMBAの経営―経営シミュレーションゲーム「BizLAUNCH」活用法

相葉宏二/ソニー・ヒューマンキャピタル 2002/11 日本経済新聞社 T R


ビジネスゲームで学ぶ「経営のしくみ」

田中宏和 2012/4 静岡学術出版
p56  1000円+税
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ビジネスゲームで鍛える経営力

岩田安雄、斉藤文、坂本祐司
長屋信義、松村有二他
2012/12 潟Jットシステム
p232  1900円+税
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